二重人格神様~金と碧の王~

「それは…いいんです。もう」

「…そうか」

そう、言ったときだった。

その場でルーテルさんには付いて行かなかった老人は身体を小刻みに震わせ、グレンさんをにらむ。


「わしは…許しません…ルーテル様こそが、海鈴様の花嫁にふさわしいのじゃ…人間など…あってはならない…貴様のせいだ…貴様が、海鈴様の中に存在するからいけないのだ!!貴様など、消えてしまえ!!!」

「…え?…あ」


ドスの効いた声で叫び、老人はおもむろに剣を広いグレンさんに向って走った。


あぶない!そんな事を考える余裕もないほどの速さ。


まるで、周囲がスローモーションのように通りすぎていくのがよくわかる。


どうしよう…。鋭くどがった剣の先端がグレンさんに突き刺さる光景がよぎり、血の気が引いた。


助けなくちゃ。グレンさんのこと!


「あぶない!!」


頭の中で、いろんな事を考えた。でも、そんな考えより早く私の体が動きグレンさんの前に出る。


握られた手を振り払い、胸板を力いっぱい押すのと、ほぼ同時だった。


「…あっ」


チクリと腹部に小さな針がささったような痛みが走る。見るのが恐かった。起こってしまっている事を考えると手が振るえ、息を飲み込んだ。

< 390 / 513 >

この作品をシェア

pagetop