幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
剣として
最近、嫌な夢を見る。
暗闇のなかに垣間見えるのは、血塗れた刀が月明かりに不気味に浮かんでいて、鮮血が刃を伝って地に滴り落ちるところ。
ぞっとするような恐ろしい夢。
でもそれ以上にもっとおぞましいことが。
その刀を握っているのは紛れもない自分だった。
何を考えてるのかわからないような顔で、ただ目の前の死体を見つめている。
譲は、無我夢中でその闇を振り払うように首を振りながらはっと身体を起こした。
布団を握っている手は小刻みに震えており、手にはびっしょりと汗をかいている。
辺りを見ると、まだ夜も深い。
譲は額に指を添える。
ここ最近見る本当に嫌な夢。
(私……どうかしちゃったのかな)
きっと島原に働きづめで疲れているのだろう。
これからはこまめに休んだほうがいいのかもしれない。
そう思って譲は再び眠りについた。