好きなんて言えないよ。
その瞬間恋梨ちゃんの手が私の方にスーと伸びて来た。


やばい、殴られる…!



そう思って反射的に思いっきり目をつぶった。



するとふわっと私は恋梨ちゃんの香り包まれていた。



「…え?」



殴られるかと思ったのに…どうして私は恋梨ちゃんに抱きしめられてるの?


私の背中に恋梨ちゃんの手がある。



「…ごめんね。十和。私ねほんとは気づいてた。でも言えなかった。…十和に紺野君のこと取られたくなかった」



恋梨ちゃんは震えている声でかすかにそう言った。


…あ、恋梨ちゃんも私と一緒で伝えるのが怖かっただけなんだ。



わたしも恋梨ちゃんの背中へと腕を回した。



「恋梨ちゃん、私こそごめんね。恋梨ちゃんに嫌われるのが怖くて言えなかった」



やっと恋梨ちゃんに言えた。


正直な気持ちを。



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