<短編>夢への片道切符
そもそも私がこの喫茶店にいる理由、それはただの雨宿りだった。

雨宿りのつもりで入った喫茶店のコーヒーはまずかった。

それでも私は雨がやむのをひたすらそのコーヒーを飲みながら待った。

ひびが入った窓からのぞいた景色は今まで見たこともないような景色だった。

自分は今、よく知っている街にいるはずなのになんだか異国の地にいるような気分だった。

窓から見えた景色、それは確かに私の住む「街」だった、でも見たことのない景色。

雨のせいもあるが、灰色の濃い霧が街を包んでいた。寒気が私を襲った。

見慣れているはずの街なのに、知らない異国の地にいるような孤独感が私を襲った。そのまま私はしばらくの間、窓の外を見ていた。時間はどれぐらい過ぎたのだろうか。






「カラーン、コロン」入口のベルが鳴った。
また、新しい客がやってきた。
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