恐怖短編集
数年前からの常連客らしいその人は、いつも仕事前と仕事帰りにうちへ訪れた。



「いつもパンだね? 体壊すよ?」


「大丈夫だよ、ここのパンはちゃんと栄養面も考えてるだろ?」


「そうだけど、ご飯とか食べたくならないの?」


「そりゃぁあるけど、なんせ一人身だからね。


夏海ちゃんが、お嫁さん候補として作ってくれるなら別だけど?」


冗談で、子供だましで言われた言葉。


私はそれをわかっていながらも、赤くなる頬を押さえることができなかった。



初恋、だった。
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