恐怖短編集
オーバーに目を丸くして見せた後、祐樹は試食用に切ってあるパンをひとつ取ってかじる。


祐樹がそのパンを飲み込むまでが、緊張で永遠のように長く感じる。


「どう?」


「うん、おいしいよ。とても」


優しい笑顔で、私を撫でてくれた。


それは、妹としてでなく、一人の女としての撫で方だった。


やけに暖かく、その手から愛情が流れ込んでくる感覚に、私は一歩後ずさりする。


「今日はお祝いしようか」
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