恐怖短編集
けれど、さっき見た光景はそのままで、私に気付かない二人がゆっくりとこちらへ向かって来ている。


朝出かけるときはスーツだった祐樹が、今は私と始めてデートしたときと同じようなラフな格好をしている。


そのため、二人の年齢さはさほど離れていないように見えて、第三者から見たらただの学生カップルとでも思うのだろう。



だけど、その人は私の夫よ。


その人は、子供までいるのよ。


近づいてくる二人に、私は桜の木の陰に身を潜めた。


手の中で、いつもと違う空気が理解できるのか、娘が小さく息を飲んだ。
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