恐怖短編集
「大丈夫よ」


小声でそういい、真美の頭をなでる。まだ細くて、絡みやすい髪が頼りない。


二人が、さっきまで私たちのいた場所で呑気に桜を眺め始めた。


私は悔しさから奥歯をかみ締め、爪を木にめり込ませる。


裏切られていた。自分の一番大切な人たちに。


その思いが、ようやくリアルに私に遅いかかってくる。耐えられない、怒りと悲しみと侮辱感。


その勢いにまかせて出て行こうとした瞬間、隠れていた私に恭子が気付いた。
< 43 / 349 >

この作品をシェア

pagetop