朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
哲は。
ものの数分で、来てくれた。
私の携帯は何度も着信を告げる。
音を最大にして、電話には出るな、って言うから。
繰り返し、繰り返し鳴る音を、ずっと聴いていた。
背後の公道を、走る靴の音。
小枝がパキパキと折れる、音。
植え込みを踏み越すように現れた赤い髪の、哲が。
真っ白い息を吐き出しながら、私の隣に、崩れるように、座り込んだ。
「…っに、してんだ馬鹿ッ!!」
はあああ、と仰向けに更に崩れる哲が、下から私を睨み上げた。
こんなに寒いのに、哲は流れそうに汗をかいていて。
もしかして、心配どころか、ものすごい労力を…強いてしまった?
「ごめ…」
「この馬鹿女!!」
うわ、予想以上。
しょんぼりとうなだれた私の顔を、下から覗いたまま哲は、半身を起こす。
真っ直ぐに私の頬に触れた、哲の右手が熱くて。
火傷を。
するんじゃないかと、思った。