朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~
「……どっからか…飛び降りたかと思った」
私の耳たぶを指先で掠めて、ふと手を引いた哲は、着ていたロングコートを脱いだ。
一見、真っ黒のそのコートは、哲が今年買ったばかりのもので、ゴシック風の、派手なもの。
中に着た部屋着の、カーキ色のパーカーとは、全然合わなかった。
「哲」
腕があがらなくて、肩から掛けるだけになったコートを汚したくはないけれど。
「…立て、ない。も…ちょ、待って」
体温で温められたコートは、生き返る、ってこういう感じか!って思うくらい暖かかったけれど。
冷えに冷えた私の体は、一向にスムーズに動く気配がなかった。
「…おぶう?」
「やっ…ちょ…待って、もうちょっと解凍……」
「………無理に立ったら折れんじゃね?」
折れっ!?
いや、確かに凍ったものは折れやすいけど!
「ちょっと、足」
哲の手が、素肌の足に、やわりと触れた。