朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


「……どっからか…飛び降りたかと思った」


私の耳たぶを指先で掠めて、ふと手を引いた哲は、着ていたロングコートを脱いだ。

一見、真っ黒のそのコートは、哲が今年買ったばかりのもので、ゴシック風の、派手なもの。

中に着た部屋着の、カーキ色のパーカーとは、全然合わなかった。



「哲」


腕があがらなくて、肩から掛けるだけになったコートを汚したくはないけれど。



「…立て、ない。も…ちょ、待って」


体温で温められたコートは、生き返る、ってこういう感じか!って思うくらい暖かかったけれど。

冷えに冷えた私の体は、一向にスムーズに動く気配がなかった。




「…おぶう?」

「やっ…ちょ…待って、もうちょっと解凍……」


「………無理に立ったら折れんじゃね?」



折れっ!?

いや、確かに凍ったものは折れやすいけど!



「ちょっと、足」


哲の手が、素肌の足に、やわりと触れた。



< 233 / 354 >

この作品をシェア

pagetop