朝の旋律、CHOCOLATE ~Whole Lotta Love~


「蜜」


呼ばれて、足を止めた。

抱えられるように、体の向きを変えられた先の、工場の前に婿様が立っていて。

その熊のような髭面が、ひどく安心したように、緩んでいた。



みちゅ、哲の言うこと、ちゃんときかなきゃ駄目じゃないか、
って。


一生“蜜”とは発音出来ないままなのだろう婿様に、ごめんなさいって小さく頭を下げる。

ちょっと距離があったから、聞こえなかったかも知れないけど、婿様は、よく休みなさい、と。

珍しく大人の顔で、微笑んだ。




「婿様も、心配してくれてたんだね」

「蜜に何かあったら、真っ先に連絡入るだろうから」

だから、一番に連絡したんだ、と、哲は再び私の体の向きを変えた。


誘導されるように玄関に足を踏み入れて、はたと。




「哲……いま、何時?」

「……1時前くらいか?」



駄目じゃん。
なに入れてくれようとしてんの。

11時過ぎたら怒るくせに。




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