ほどよいあとさき


そう言って、してやったりというような顔で歩を見る相模主任に、歩は立ち上がって形ばかりの礼をしたあと、私にだけ聞こえる低い声で呟いた。

「あいつが結婚する時には、絶対に仕返しだ。あいつが言葉を失うほどのスピーチをしてやる」

金屏風の前に座り、にこやかな笑顔を崩さないまま低い声で唸る歩。

私はその子供っぽさに、思わずお腹を抱えて笑った。

そしてその日、そんな私と歩をお祝いしてくれる人たちの温かい気持ちを励みに、これから幸せな人生を歩んでいこうと、誓った。

何より、私が歩を幸せにしてあげるんだと、慣れないウェディングドレスに躓きながらも何度も思った。

両家の親族はもちろん、会社の上司や同僚たち。

大勢の人たちからの祝福は、私たちの幸せな未来を温かく示してくれるようだった。

一生忘れることのない、幸せに満ちた時間だった。

その後。

その祝福の気持ちに添うように、私と歩はずっと、お互いを精一杯愛し、愛されて、幸せな日々を送っている。



< 115 / 122 >

この作品をシェア

pagetop