魅惑のハニーリップ
「なんとなく最近ふたりとも意識しあってるっていうか、お互いに好きなんじゃないのかなって思ってたんだよね」

 予想が当たった予想屋のように、腕組みをしながら優子はしたり顔になった。
 でもその表情を見るとうれしそうにしてくれているから、私も自然と顔の筋肉が緩んでくる。
 親友が自分の恋のことで喜んでくれるは幸せだ。

「昼休みに駅地下のケーキ屋さんでなにか買ってくるよ!」

「え?」

「ケーキでお祝いしよ! 遥の彼氏できた記念に!」

 親友のその気持ちはとてもうれしいのだけれど……

「ごめん。あの……太るからちょっと甘いものはやめようって思ってたとこなんだ」

「え?! 遥が??」

「うん。だってブクブクに太って嫌われたくないもん。できたら佐那子さんみたいにシャープになりたい」

 これは、世に言う『乙女心』というやつだ。
 好きな人ができたら、美しくなりたいと思うのは当然だろう。
 自分磨きにも熱が入るってものだ。
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