魅惑のハニーリップ
 そのまま私も仕事に戻り、忙しく作業に励んだ。

 こういう忙しい現場も、たまにはいい。
 余計なことを考えている暇がないし、とても気がまぎれる。

「遥ちゃん、お疲れ」

 お昼の休憩になったとき、後ろから声をかけられて振り返ると、宇田さんがいつもの笑みをたたえて立っていた。

「お疲れさまです」

 宇田さんに会えたことがうれしくて仕方なくて、思わずボーっと見とれてしまった。
 でもそれはほんの一瞬で、そのあとすぐに彼の変化に気付いて心配な気持ちになった。

 宇田さんは笑顔だったけれど、その裏に疲れた表情を隠しているみたいだった。
 寝不足なのか、目の下に薄っすらと、宇田さんには似つかわしくないクマができていた。

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