魅惑のハニーリップ
 現場に戻って何気なく辺りをキョロキョロと見渡すと、小さな机に書類を並べ、パイプ椅子に座って脚を組んでいる宇田さんを発見した。
 目の前の書類を真剣な表情で睨みつけている。
 お昼休みもろくに取らないで、仕事をしていたみたいだ。

 やっぱり仕事をしているときの宇田さんはカッコいいな。
 なんて見とれていると、宇田さんの肩に細くて華奢な手が後ろから置かれた。

 座っている宇田さんの真後ろに立っていたのは……
 あの、浅田さんだった。

 宇田さんも後ろから話しかけられ、ビックリしたように首だけを後ろに向けて返事をしている。
 なにか二言三言と言葉を交わして、宇田さんはまた元のように書類に視線を落とした。

 でも、浅田さんの両手は宇田さんの両肩にしっかりと置かれたままだ。

 どうやら宇田さんの肩を揉んでいるみたいだけれど、浅田さんはなぜかとてもうれしそうな表情をしている。
 そんなふたりの仲の良さそうなところを見ていられなくて、思わず視線を逸らせた。

 正直、嫌だと思った。

 理屈ではなく、嫌なものは嫌だ。


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