Dolls
私はというと、家の中でももちろん優等生を演じている。


朝は家族三人揃っての朝食。
母が作ってくれたお弁当を持って学校へ行く。
部活のない日はほとんど真っ直ぐ家に帰って机に向かって勉強。
夕飯は母と二人、珍しく父が早く帰って来た時は家族三人で。


当たり障りのない会話をして、徹底的に“良い子”を演じる。


それが私の日常だ。
他人に全く関心のない私にとって、こうすることが一番他人から干渉されない方法だと気付いた。


でも、こんな私でも唯一心を許せる存在がいる。


「今日も退屈な一日だったよ、カナデ。」


私は机の端にいる、一体の人形に向かって言った。


緩くウェーブのかかったダークブラウンの髪色に、同じ色の瞳。
白に近い肌の色に、薄く朱色に染まっている頬。
薄ピンクを基調としたドレスに身を包んだ可愛らしいビスクドールだ。


話を聞くだけで何も答えない、カナデと名付けられた人形。
彼女だけが、唯一心を許せる相手だった。
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