狼系王子とナイショの社内恋愛


振り向いていたのは結城さんで、目を合わせると微笑まれた。

「片方だけなら俺もたまにありますけどね。
痛くて涙出ますよね、アレ」
「……私はそれが両目だったんであんなにボロボロだったんです」
「コンタクト、本当にしてるんですか?」

そう聞く結城さんは優しく微笑んだままで、私のついた嘘に文句をつけようとしているようには見えなかったけれど。

今は涙をコンタクトのせいにしておきたかったから、してますとだけ答えて結城さんに背中を向けた。

18時前の空はまだ夜に染まりきってはいなくて、紫や白やオレンジや黄色。
色んな色が空のパレットの中で混じり合っていた。

いつもより一時間ほど早い帰り道は、いつもに比べて人通りが少し少ないように感じた。

「高橋さん、夕飯食べて行きませんか?」

隣に並んだ結城さんをチラっと見た後、首を振る。

「行きません」
「俺、行きたい店あるんですよ。でも、カップル限定じゃないと入れなくて。
おごるし、そこ行きませんか?」




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