狼系王子とナイショの社内恋愛
「尚更行きません。昨日ごちそうになったばかりじゃないですか。
っていうか、今日はそんな気分じゃ……」
「まぁ、高橋さんに選択権なんてないですけど」
見ると、結城さんは意地の悪そうな笑みを浮かべていて、思わず立ち止まる。
「切り札はもう何の役にも立たないでしょ」
結城さんも私の数歩先で立ち止まって私を振り向いた。
その顔にはまだ笑みが浮かんだまま。
今日は眼鏡のレンズ越しじゃない瞳が、余裕に細められていた。
「課長が結婚するから?」
「そうです。私はもう……課長をかばう理由なんてないですから」
「まぁそうですよね。自分を捨てて他の女を選んだ男を守る理由なんてない。
俺が明日噂を広めたところで、一方的に課長が悪く言われるだけだし、そうすれば高橋さんも少しはすっきりするんじゃないですか?」
高橋さんがその気なら復讐に協力しますよ、と笑う結城さんに、唇をかみしめる。
私が課長をかばう理由なんてもうない。
結城さんの言ってる事だって間違ってないし、そうすればいいじゃない。