こっち向けよ
リムジンなんてゴツい車も好きではない。
無駄に広い玄関の大きな扉を開け、慣れないヒール靴を両手に握り締めて走った。
庭師や門番に目もくれず、強引に屋敷を出た。
実は自宅から5キロ圏内のこの本邸。
走ろうと思えば走りきれる。
だってゴールには愁がいるから。
目の前ににんじんをぶら下げた馬のように、ひたすら走った。
不思議と足の痛みを感じることはなくて、頭の中はただ[愁]一色。
明日に誕生日を祝い直すって言ってたけど、待ちきれないよ。
今日がいい。