こっち向けよ
「ならば、話は早い。」
そう言ったお祖父様は、部屋のドア脇に控える森さんに目配せしたようだ。
後ろで物音がしたかと思うと、「失礼いたします。」と丁寧で落ち着いた声が部屋に響いた。
私たちは振り向くことはせず、ただお祖父様を見据える。
──動きの乱れは心の乱れ──
相手に弱みを見せてはならない私たちにとって、仕草一つも気を抜けないからだ。
さっきの表情とは打って変わって私たちの後ろに向かって柔らかく微笑むお祖父様は、何か企んでいるように微かに見えた。
「どうぞ、こちらへ。」
森さんが声の主を、三人掛けソファの反対側へ案内する。
そこには───
───「ありがとうございます。」
そう言って微笑む、お祖父様に引けを取らない威厳のある黒スーツ姿の老人と
同じく黒スーツ姿で髪を整えた時任真紘がいた…