トイレキッス
「あの、先輩の名前は何て言うんですか?」
女生徒は、目だけを動かしてこちらを見た。
「淵上恭子」
「淵上さんですね。おれ、麻見洋平っていいます。一年です。よろしくお願いします」
淵上は無言でうなずいた。そこで会話が途切れて、沈黙がおとずれた。淵上は、無表情のまま、天井を凝視している。なんだか、気まずい。
何か話すべきかと頭を悩ませていると、突然ドアが荒々しく開かれて、背の高い男子生徒が入ってきた。
「おい、淵上、文化祭ん時に使った効果音のテープが見つからんのやけど、・・・・・・ん?」洋平に気づいた。「誰や君?」
「入部希望者」
淵上がつぶやく。
男子生徒は、洋平の頭の上から足の先までをさっと見渡した。
「ほうっ?めずらしいの、こんな時期に。えっと、君、名前なんて言うん?」
「麻見洋平です。一年生です」
「おれは三田村順次。二年生。よろしくっと。それじゃあ、麻見君、いまから一緒に屋上行こか」