トイレキッス


芝居は順調に進み、終わりが近付いてきた。


いま舞台の上では、サンタクロース役の部員が十人ならんでおり、ミツキが両手を腰にあてて、その前を往復している。確か、十人のサンタクロースの中から、誰が偽者かを暴きだすといったシーンだ。


洋平は舞台裏で、他の部員達と後片付けの段取りを話しあっていた。
すると、舞台袖の方から淵上が歩みよってきた。何か言いたそうな目をしながら、洋平の前に立ってだまりこむ。


洋平は、誰かに話しかけてもらわないとしゃべることができないという彼女の性癖を思い出して、口をひらいた。


「淵上先輩、どうかしたんですか?」


「川本さん、台詞忘れてる」


「え?」


洋平は舞台の方に顔を向けた。


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