トイレキッス
打ち上げが再開されると、ミツキと三田村は座る場所を変わった。そうすると、三田村は淵上の隣に、ミツキは洋平の隣に座る形となる。
きっとこうすることも、三田村の作戦の内だったのだろう。
洋平とミツキはお好み焼きをつまみながら話をした。
洋平のテンションは高くなっていた。
告白がうまくいった喜びと、彼女になったからにはミツキを楽しませなあかんという使命感のようなものが、口の動きを活発にさせた。
自分でもおどろくくらい、話題が次々に浮かんできて、ミツキを何度も笑わすことができた。
ミツキが割箸でジュースの瓶をつつきながら、こんなことを聞いてきた。
「打ち上げ終わったら、ふたりでそこらへん散歩せん?」
よろこびで頬がひくつきそうになるのをこらえながら、洋平は、
「おう、ええよ」
とカッコつけて短く答えた。
そのとき、カウンター席のほうで、小さな悲鳴があがった。
部員達がそちらのほうを向くと、トイレに行っていた一年生の女子部員が、唇を噛みながら、スカートの尻をおさえていた。
その背後では、土方風の男達が下品な笑い声をあげていた。
その女子部員が何をされたのかは、だいたいの予想がついた。
部員達は、土方風の男達を静かににらみつけた。
男達も、笑うのをやめて、こちらをにらみ返してくる。
重い沈黙が、店内を漂った。
三田村がそっと近付いてきて、洋平にささやいた。
「おまえ、喧嘩したことあるか?」
びくっとして洋平は首を横にふった。三田村は頭をかいた。
「そうか。こっちは男が少ないけんな。はっきりいって不利なんよな。店にも迷惑がかかるし、今回はやめとくか。あいつらの顔覚えて、次の機会に仕返しを」
そのとき、店を壊すかのような怒鳴り声が炸裂した。
「何さらしとんじゃ、こらあ」
おどろいてふりむくと、仁さんが土方風の男のひとりを椅子で殴りたおしていた。
殴られた男は、うめきながら壁際にうずくまった。
他の男達が、ものすごい形相になって、次々と立ち上がる。