トイレキッス


食器を洗う音で目が覚めた。


洋平は座敷の畳に寝転がっていた。ただようソースの匂いから、自分がまだお好み焼き屋にいることがわかる。


半身を起こしてまわりを見渡した。


座敷には誰もいない。
テーブルの上はきれいに片付けられていた。座布団も、隅に積みもどされている。食器を洗う音は、厨房のほうから聞こえた。


カウンター席を見ると、店のおばちゃんと話す仁さんの姿が目にはいった。
こちらに気付くと、仁さんは小走りで駆けよってきた。


「おう、頭大丈夫か?」


洋平は頭のてっぺんをなでてみた。かすかにもりあがっている部分があり、そこを押すと痛みが走る。どうやらたんこぶができているようだ。


「まあ、大丈夫そうです」


「ほうか」


仁さんはため息をついた。


「あの、おっさん達は?」


「ああ、店のおばちゃんが、警察呼んだでって嘘ついて、追っ払ってくれたわ」


店のおばちゃんが、水をついだコップを洋平にわたして言った。


「君のお友達、みんなぼこぼこにされとったんよ」


「人数差がありすぎた。同じ人数やったら、相手は酔っぱらってたし、おれらが勝っとった」


そうくやしそうにつぶやく仁さんの顔には、青痣ができていた。
店のおばちゃんが、洋平の心配そうな顔つきを見て笑った。


「大丈夫よ。学校に連絡したりはせんけん。友達のために戦ったんやろ?もっと胸をはりぃな」


「はあ」洋平は仁さんに聞いた。「他のみんなは?」


「店の片付けを手伝ってから、帰ったわ」


「そうですか」


洋平は店内を見渡した。


川本も帰ったんか。


胸の中でつぶやき、少しうつむく。




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