エンドロール
「彼にはたくさんの可能性があったのに、私の病気を治したいっていう理由だけで医者を目指した。彼のお荷物になりたくないのに自由に生きてほしいのに、私が彼の足枷になってしまっている気がして怖くなったの。」
だけど、そんな彼女の気持ちをよそに弘原海は周囲の期待通りにどんどん研究者として医者として飛躍していった。
「彼は医者になるのはお前の為じゃねぇって言ってたけれど、私にはそうは思えなかったわ。」
「男が女の為に何かしたいと思うのはごく自然なことだと私は思いますよ。それが愛してやまない相手なら尚更かと。」
「あら、随分知った風に言うのね。」
ニヤリといたずらっぽくほそく微笑んだ。
「いや、別にそんなつもりでは…。」
「さてはあなたもそういったお相手がいるのかしら?」
「オレですか…?そう…かもしれませんね…。」
オレの返事に面食らったかのような表情をして、こちらをジッと見つめてきた。
「あ、あの、オレの顔に何かついてますか?」
「いいえ。あなたのような人でもそんな顔もするのね。」
一体どんな顔をしていたのだろうかと自分でわからないが、これから待ち受ける苦境を前にこの空間に穏やかなひとときが流れていた。