エンドロール
「では、私はこれで。また来ます。」
日も暮れてきた頃あまり長居しても、彼女の身体に差し支えると思い、椅子から立ち上がって一礼し、病室を出ようとした。
すると、「待って。」と背中越しから呼び止められ、その声に振り返った。
「私、彼の今までの人生のほとんどを捧げさせてしまったわ。彼が殺人を犯したなんて信じられないけれど、もしそれが真実なら彼をあんな風にしたのは私なの。だから、彼は何も悪くない。」
「信じているんですね。」
「だって彼を愛してるもの、ずっと。
きっと私の方が彼がいないとダメなくらいにね。
だけど私じゃ救えない。
こんなことあなたに頼むのはおかしいかもしれないけれど、お願い。彼を助けて。」
いつもならこういう時、社交辞令程度の笑みを口許に浮かべてそれとない返事をしていただろう。
だけどこの時なぜか美紅の”弱いものを搾取して己の私腹を肥やしてふんぞり返っている金持ちどもにむかついた”という言葉が頭をよぎった。
どうやら今日のオレはどうにかなってしまったらしい。
「そのお願いは高くつきますよ。」
挑発的な笑みを浮かべながらそう言い残して、病室を出たのであった。