エンドロール
「だから、堕ろさせる予定だった。だけど、京華は産みたいと言った。」
京華さんは先が長くないとわかっていた。
いくら身体が安定してきたからとはいえ、次いつまた入退院する日々が来るかわからない。
ましてや、長く生きられないと言われた身。
いつしか近い将来自らに死が訪れると言うことは容易に想像できたはずだ。
もしいつしか自分が旅立つ時が来たら愛する夫が一人にならないように残したかったのだろう。
自分が愛し、愛された証拠として。
「京華は見事に産んで見せたよ。元気な女の子だった。病院中に響き渡るくらい大きな産声を今でも覚えているよ。」
そう語る弘原海の表情は紛れもない温かい父親の顔だ。
「だけど、京華は衰弱しきってそこから良くなることなかった。
日に日に衰弱していく京華に何もしてやれない自分が悔しくて憎くて……オレ医者なのに…。」
手に強く握る拳が弘原海の悔しさを表現する。
その姿を力及ばない無力な自分と重ね合わせてなんだか私までいたたまれない気持ちになった。
「何の為に医者になったんだよって…。
それに京華をこんな風にしたのはお前のせいだってだんだん火灯のことも愛せなくなっていった。
そんな自分が余計に情けなくて己の無力さに苛まれながらただ見守ることしかできなかった。」
話す弘原海は目に涙が浮かべ、時々鼻を啜っていた。