「視えるんです」


先輩の、真っ直ぐな言葉。
それを聞いた私の目からは、涙がポロポロと流れ出した。




「わ、私っ……本当は先輩の力が、怖くて……一緒に居ると、変なことばかり、起きるから……。
雨宮さんも、先輩と一緒に居るなと、言って……私は、足手まとい、だから……」




色々なものが、一気に溢れ出す。

先輩と一緒に居るということは、危険が増すことになるんじゃないか、とか。
雨宮さんが言ったように、私は足手まといだから、とか。

一緒に居たら、いつか私も先輩も、霊に何かされて死んでしまうんじゃないか、とか。

本当に、色々なことが溢れ出してきた。
今まで言えなかったことが、全部一気に言葉として現れる。

いっぱいありすぎて、グチャグチャだ。


それでも先輩は、優しく頷く。




「知ってたよ」

「え……?」

「雨宮が志緒に言った言葉とか、俺を怖がってることとか、本当は全部知ってた。
だから俺は、志緒に触れることを躊躇っていた。
でも、やっぱり好きだ。
志緒が俺のそばに居てくれることが、何よりも嬉しくて、幸せなんだ」




ゆっくりと、先輩の手が私の頬を撫でる。
ぬくもりが、私の体を包み込んでいく……。




「ちゃんと、守るから。
だから俺を信じて、俺のそばに居てほしい」

「本田先輩……」


「カケルでいいよ。 翔と書いて、カケル」




そんな風に言って笑う先輩を見て、私も自然と笑顔になる。

本田先輩……ううん、翔先輩は、私を守ってくれる。




「……私は、翔先輩の足手まといになるかもしれません。
それでも、一緒に居させてくれますか……?」

「そばに居ろ。って言ってるのは俺だよ。
足手まといになったとしても、一緒に歩んでいきたいと、俺は思ってる」

「……ありがとう、ございますっ……」




一緒に居て、いいんだ。
翔先輩と共に、未来へと……ーー。








視線と視線を合わせ、私たちは微笑む。

そして、

ゆっくりと唇を重ねた。


今度こそ、お互いの意思を繋ぎ合わせて……。


< 130 / 214 >

この作品をシェア

pagetop