「視えるんです」
……でも、私が声を出したら、またイヤな顔されるんだろうな……。
うん、黙っていよう。 それが多分、一番いい。
よし。先生にもらったメロンパンを食べながら静かにしていよう。
「で、何が居た?」
「猫」
「……猫?」
「そう、後ろ足は潰されていて、切れた腹から内蔵が飛び出してる猫だ」
「……へぇ」
……ちょっと!! そんな話をされてるそばで、メロンパンが食べられるわけないじゃん!!
うぅ……食欲無くなった……。
「この学校の『ヤンチャ』な生徒が殺ったらしい。
憎しみの中で見えたのが、その制服だ」
「……そっか」
「自分は苦しみの中で死んだのに、奴らはのうのうと生きている。
殺したことすら忘れて笑っているんだ、ヤツからすれば、面白くはないだろう?
この世とあの世の狭間に引っかかった理由はソレだ」
「うん」
「先生が言った『様子がおかしい』は正解だったが、何故理由がわからなかったのか?それは、猫だからだ。
人間の憎悪はわかりやすいが、動物は感知されにくい。
ハッキリ言っちまえば、人間を恨みながら死んでいく動物は多い。
愛情を与えられ育てられた動物は人に懐くが、自然の中で育ち、人間に意味もなく殺される動物は五万と居るからな。
だからヤツの憎悪は気付かれなかったわけだ。他の強い存在……ここでは鏡の女だな。
あの女の憎悪に紛れ込んでしまったから、猫の声は聞こえにくくなっていた」