「視えるんです」




「……もし視えるようになっちゃったら、ごめんなさい……」

「もしそうなったら、『今まで』に戻るだけだから」




そう笑った先輩は、どこか遠くを見て息を吐いた。

それから、静かに私の手を離す。




「雨宮のことなんだけど」

「え?」

「雨宮が居なくなったあと、色々調べてたんだ」




ゴソゴソ、と鞄を漁り、何やらファイルを取り出した。

街灯の明かりを頼りに、中身を見ると……そこには新聞の切り抜きが何枚も貼られていた。








「あっ……」




そこに貼られているもの全て、とある『事故』についての記事だった。


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