「視えるんです」
「本田はお前を『特別だ』と思ってる。 よかったじゃねぇか、南沢。
大事にしろよ? そういう存在は、貴重だからな」
特別……。
先輩は、私を『特別だ』と思ってくれている、ってこと……?
「お前だって、本田を特別だと思っているだろう?
人と人が想い合わなきゃ、出来るもんも出来ねぇからな」
そう言った半沢先生は、ふっと笑ったあと、またタバコに火をつけた。
「お前も少し寝とけ。 先は長いぞ」
……その言葉に導かれるがまま。
まるで、魔法にでもかかったかのように、突然睡魔が襲ってきた。
「……私は、先輩の隣に居て、いいんでしょうか……」
瞼を閉じながら、先生に聞く。
想っていてもいいんでしょうか。と。
「好きならいいんじゃねぇの」
好き……。
そう、私は、先輩が好き。
でも、やっぱり雨宮さんのことも、好き……。
そんな中途半端な状態で、居て、いいのだろうか……。
「……好きって、難しいです。
想いを伝え合うのって、大変、です……」
そう言った私に、先生は言う。
「だからこそ人は、生きている」