「視えるんです」


生きて、いる……。




「想いを伝え合い、触れ合う。 それは生きてる奴にしか出来ねぇだろ。
そりゃあ、俺のように力があれば幽霊と話をすることや『気』を使って触ることも出来るけど。
でも普通の奴じゃそんなこと出来ねぇだろ。
だったら『生きてる時間』を大事にするしかねぇよ。
死んじまったら何も出来ない。 会いたいと思う時には会えない。
声が聞きたい、話がしたいと思っても向こうは姿さえ見せてくれない。
生きてる間にもっと話しておけばよかった。触れ合っていればよかった。そんな風に後悔するくらいなら、生きてる『今』を大事にしろよ」




ーー俺みたいに後悔するなよ。




……先生の言葉が聞こえた時、私は静かに眠りについた。








先生は、家族を失っている。


だからこそ、

私に『後悔するな』と、言ったんだ。




先輩との時間を、大事にしろ。と。
『今』を大事にしろ。と。




それがきっと正解であり。

私が進む道なんだろう。





先輩との道を進むことが、

生きている私が、するべきことなんだろう。







「自分を、大事にな」




そんな風に言った先生の声が、どこか遠くで聞こえた気がした。


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