「視えるんです」




「視えるようになったらしい、って聞いてたけど。
案外大丈夫そうだな」

「……大丈夫、なんですか……?」

「多分な」




椅子に近づいた先生は、まるで誰かの頭を叩くかのように、手を素早く動かした。

あ……これが、『大抵殴れば消える』ってやつ……?

先生がその動きをした瞬間、重苦しい空気は消えていつもの昼休みへと戻った。気がする。




「で、どうするよ?」

「え?」

「怖い目に遭ったが、俺から離れるか?」




……確かに、今のは怖かった。
見えないけど、確かにそこに何かが居た。

それは多分、先生に寄ってきた幽霊だと思う。
先生と一緒に居ると、今みたいなことが、頻繁に起こる……の、かもしれない。




「俺は南沢と飯を食うの、好きだけどな」




……何も答えられない私に、先生はいつもみたいに笑う。

それから時計を見て、『そろそろ戻れ』と促した。

だから私は、何も言えないまま……小さく頭を下げて音楽室を後にした。


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