ONLOOKER Ⅴ


開け放しのドアからホールに入ると、ほど広い空間に、細長いテーブルが並んでいる。
と同時に沸き起こったざわつきで気付いたらしい、真琴が、皿とフォークを両手に振り返った。

そして、満面の笑みを浮かべる。


「あ! 先輩たち、間に合ってよかったです」
「大変だったにょろよー……ひじぃが迷子で鬼ごっこ」
「へ?」


真琴は笑顔のままで、きょとんとした顔をした。
しながらも、皿に乗った生ハムのサラダを頬張っている。

真琴の暴食と言っていいぐらいの食べっぷりから視線をそらすと、傍らでは、准乃介が紅と談笑していた。
さっき恋宵の言っていた写真の話が気になるが、どこにも聞ける雰囲気ではないし、今気にすることではないだろう。

ふと直姫は、そんな二人の背後で、背広姿がうろついていることに気付いた。
さっき見かけた、審査員の一人らしい男だ。

枯れたように痩せていて、スーツも新しいものではない。
なんとなくこの場にそぐわない印象だが、やけに風景に溶け込んでいる。

直姫が横目でその男を眺めていると、夏生がそばに寄って来て、言った。


「あのグレーのスーツ、週刊誌の記者だよ」
「えっ?」
「え、あいつ、いつも悠綺の生徒マークしてる奴じゃん」


いつのまにか、聖も隣に並んでいる。


「マークって? うちはマスコミは完全シャットアウトですよね」
「外での行動追っかけてんだよ。あそこの社長令嬢が校外で誰と会ってたとか、対立してる政治家の息子同士が仲良くて、学校帰りに数人でケーキ屋に寄ってくオトメンだとか、そーゆう小ネタ記事にしてんの」
「くだらな……どっかにシメられたりしないんですか」
「大物は徹底的に避けるんだよ。ギリギリ訴えられないラインを狙っていく。だからタチが悪い」

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