sound village



“またあした。
柏木さんに無理させちゃ
ダメだよ。”

“先に駐車場に行く”


手早くシャワーを済ませて
スマホを確認すると、
カノジョと、柏木からの
短いメールが来ていた。


運転も、替わってやった方が
いいだろうな。


膝も、恐らく精神的にもパンチを
食らったであろう状況を思い
生乾きの髪のまま車まで走る。


社用車のフロントガラス越し
倒した助手席のシートに
柏木が転がっているのが
見える。


「お待たせ。」


運転席側の扉を開ければ
ほんのり、エアコンが効いて。


「ああ。神島、すまんけど、
運転、頼んでもいいか?」


黒縁フレームのメガネを
ダッシュボードに置いたまま
奴は感情を抑えた声を出す。



「いいよ。そのつもり
だったしな。つうか、
そんな所に、眼鏡置いたら
フレームいたむぞ。

……アイツに、
派手にイカれたんだろ。」


バックミラーとシート位置を
調節しながら、少々気の毒に
思い、ミラー越しに問えば。



「あんなもん、可愛いもんや。
ホンマは心配してくれてるの
伝わるからなぁ。
何処ぞの女狐に比べれば…
ほんま、可愛いもんや。」


そうボヤき、ため息を吐く。










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