sound village
「“女狐”…って…。」
まさか…あの時の…
あの先輩の事だろうか?
滅多な事は言えない。
言葉をのめば。
「レンちゃんに会いたい。」
ため息混じりに、奴が
零したセリフに息をのむ。
…一体、どれだけ
惚れてるんだろう。
コイツは…
「…重傷だな…(苦笑)
ほら、車だすから、
シートベルトしろよ。」
駐車場の出口に向かい
アクセルを踏みながら
促せば
「もう動いてるやん…」
…ガラにもなく照れているな。
思わず、口をついた言葉だった
って事か(笑)
モゾモゾ、シートを起こしつつ
屁理屈を言う柏木に
吹き出しそうになる。
「…っで、勝敗はついたのか?」
昨夜は、佐藤係長と取引先の
接待だったハズで、この2人が
あのグダグダ劇で終幕を迎える等
考えられず、お節介な問いかけを
してしまう。
「ん〜?正直、どっちにも、
勝てる気しないから苦しい。」
“どっちにも”って、何だ?
「は?」
珍しい弱気っぷりに、
赤信号である事を良いことに、
柏木をガン見すれば
「…アメリカなんか…
今更、行きたくない。
こっちにいたい。
…少なくとも、オッサンには
レンちゃんを取られたくない。
バスケなんか…もう、とっくに
諦めてる。」
等と、言いだす始末で。
「いや、あの…俺たち
仕事で行くだけだから。
お前も斐川も、それ、
忘れてるだろ…」
何があったか、わからないが
参り切った柏木なんて
初めてで。
…すまん。笑える(笑)