sound village




「…助手席、移らないのか?」



微妙な空気になった車中
堪らなくなって、
何とか言葉を取り繕えば



「…ここでいい。」


戸惑いを隠しきれない様子で
柏木は返事をする。


「じゃあ、行きますか。
あ。柏木、泣いてもいいぞ。
心配しなくても、
言いふらしてやるから。」


いつも振り回されるお礼を
一発ブチ込めば


「…確実に倍返しするぞ。
つか、サッサと行って、
仕事戻ろうや。」


早くも体制を立て直した
コイツは。


「メタボさえなければ…
あんな格好良いオトコおらんよな。

…こっちに、ホンマ、残りたい。」


「…それ、わかるよ。
俺もホントは、みんなと一緒に
コッチで仕事覚えたい。」


走りだした車窓の外
見慣れたハードボイルドな
中年の後ろ姿を
2人で見送ったのだった。









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