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「あのバカ野郎、轢かれる直前に、体を捻ったんだ。
背中に背負ってるギターを、トラックの反対側に向くように。
……馬鹿だよな……。
自分が死にそうなのに、ギターの心配してやがんだ……!!」
私の手のひらに熱いものが触れた。
きっとそれは、汗だ。
7月の暑さのせいだ。
「……もしあの咄嗟の行動が逆だったら……。
あいつ、助かったかもしれなかったんだ」
……ギターは硬くて分厚い。
もし背中を向けていたら、彼自身は大怪我で済んだかもしれない。
「あいつにとって……。
ギターは命より大事だったんだろうな……」
泣きながら笑う倫生。
それに無理している様子はなかった。