賭けで動く恋

「そうですね、私は30ですから。恵実さんはまだ20代ですよね?」

「はい、24です。なので名前呼びはちょっと……」

それに男性の下の名前を呼ぶなんて、弟以外無いから何となく気恥ずかしい。

躊躇う私に神谷さんは笑顔を深くした。

「別に歳下は名前を呼んではいけないなんて決まりは無いんですから良いじゃないですか。
なのでこれからは名前で呼んで下さいね」

「いえ、でも
「苗字で呼んだらまた腰が立たないようにして差し上げます」

婀娜(あだ)っぽい表情で告げられた言葉に顔に血が昇った。

3日前といい、今といい、どうしてこう恥ずかし気もなく私なんかにこう艶っぽい事を言うんだろう。

たまらず足を止めた私に1歩進んで振り返った神……淳さんは空いている手を口元に当てて吐息にのせて小さく笑った。

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