賭けで動く恋

その時に私の手を包む私とは違う大きくて少しガサガサした手。

絵を描く時私を見るどこか熱を孕んだ眼差し。

休憩の時、私の事を知ろうと問う優しい囁き。

私が淳さんの事について聞くと嬉しそうに目尻を下げて笑う顔。

胸が高鳴らないと言ったら嘘になる。
けど、人の心は移ろうものだと私は悲しい程知っている。

あの人だって【この事】を知れば私から離れて違う女性に目がいくんだろう。

左肘の辺りを押さえて動かない私に、百合さんは手を止めて私を見た。

「後悔だけはしちゃ駄目よ」

「うん、分かってます」

「……さ、私も出来た。出しに行きましょう」

出来た品物を段ボールに入れて立ち上がった百合さんに頷いて、私も箱を持って立ち上がった。


この時『分かってる』と言ったけれど結局私は何も分かってなかった。

その事を翌週に嫌という程痛感した。
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