【BL】微笑みの裏側も
「どうして?」
「え……?」
「どうして毎晩あの店に行くんです?」
唐突の質問に僕は、数秒間呆然と彼をみた。
「どうしてって……欲を満たすためだよ。それ以外に理由はない。」
肩を竦めて答えてやれば、そうですかと素っ気ない返答。
「それは虚しくないんですか?」
速水の眼差しが真っ直ぐ向けられる。
寄せられた眉が同情されているようで、僕はあえて微笑んだ。
「仕方ないさ。僕は普通の恋愛なんて出来ない。一晩だけの嘘で良いから、愛に酔いしれたいんだ。」
“明日”などいらない。
その場の優しさだけでいい。
「なぜ笑うんです?本当は…」
伸ばされた手に頬を撫でられた。
「誰よりも愛されたいくせに。」