【BL】微笑みの裏側も



「どうして?」
「え……?」
「どうして毎晩あの店に行くんです?」



唐突の質問に僕は、数秒間呆然と彼をみた。



「どうしてって……欲を満たすためだよ。それ以外に理由はない。」



肩を竦めて答えてやれば、そうですかと素っ気ない返答。




「それは虚しくないんですか?」



速水の眼差しが真っ直ぐ向けられる。



寄せられた眉が同情されているようで、僕はあえて微笑んだ。


「仕方ないさ。僕は普通の恋愛なんて出来ない。一晩だけの嘘で良いから、愛に酔いしれたいんだ。」



“明日”などいらない。

その場の優しさだけでいい。



「なぜ笑うんです?本当は…」



伸ばされた手に頬を撫でられた。


「誰よりも愛されたいくせに。」

< 4 / 5 >

この作品をシェア

pagetop