ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「つーかお前ら、お似合いだよな! いい加減付き合えば?」
「「はぁ!?」」
俺と佑美は声を張りあげた。
……コイツ、沙奈のいる前で!
「あたしと敬太が? ありえない、う゛ぅマジありえない!」
「それは俺のセリフだ!」
大体の恋愛話なら、こういうふたりが最後にはくっつくが、本当に俺たちの間に恋愛感情はない。
だいたい、俺の好きな人ならこの中に……。
「明日もバンドの練習?」
が……俺なんて視界に入れず、川本くんに話しかける沙奈。
「うん、そうだよ」
その沙奈は、きっと彼に好意を寄せている。
そう思う理由は、ふたつ。
「川ちゃんのギター、すっごく高そう!」
みんなは尊敬の意を込めて”川本くん”と呼ぶが、沙奈だけは特別な呼び方をする。
もうひとつは、
「うん。これ、屋根より高いよ」
「ハハッ……それ、鯉のぼりじゃん!」
彼だけに見せる、恥じらいのない満点の笑顔だ。
……その笑顔が俺に向いたら……。
なんて願うけれど、学校にファンクラブがあるような超モテ男に敵うわけもない。
そうこうするうちに準備ができたのか、ガヤガヤと部屋を出ていく。
騒がしかった部屋が急にもぬけの殻となる。
部屋に無造作に置かれた補助カバン、その中には各々の制服が詰まっていた。
「フッ……」
俺はそれを見て笑った。
「は? アンタ、今、沙奈の制服見てニヤついたでしょ?キモチ悪っ!」
「ゆ゛ーみ゛ー! お前なぁー!」
「キャアー!」
――ドタドタドタッ。
階段を走りおり玄関を出て、俺たちは、すぐ近くにある公園へと向かう。
道中の話題は、学校のこと。
誰と誰が実は付き合っているとか、何組のどいつが初体験を済ませたとか。
そして、やはり、こういう話題も出てくる。