ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「アイツ、性格暗すぎてマジでムリ! 前の席から負のオーラ漂いまくりだもんね! 早く席替……」
「小泉、やめろ!」
俺は即座に会話を止める。
「け、敬太、急にどうした?」
「悪口も陰口も嫌いだ。そういう話はするな!」
「……ぁご、ごめん。気を付けるよ」
一瞬だけ凍りついた場の空気。
怖がっているのか、沙奈は俺のシャツを軽く引っぱりながら目を伏せていた。
でも、なぜか少し口もとはゆるんでいる。
そんな彼女だけど、下ネタになると決まって黙る。すぐ顔をまっ赤にするんだ。
俺は沙奈のそういうところが好き。
まだ何色にも染まっていない清楚な白を、俺色に染めてみたい。
なんて、酔っ払ってもそんなことは言えない。
ただ見つめるだけで、俺の顔は赤くなってしまうのだから。
「あぁ! 公園、発見!」
由香里がスキップしながら中に入っていく。
「……あのスキップ、なんかヘンじゃね?」
川本くんの的確な指摘にみんなが笑った。
地元では知らない人がいない大きな公園。
子供の頃は、ここで毎日のように遊んでいた。
そのほぼ中心にある芝生広場は、夜だと独特な不気味さを醸しだしている。
11時12分を指しながら白く浮かびあがる時計塔が妙に目立って見えた。
「ここでやろう!」
ビニール袋から花火を取り出し、大きい順に並べる小泉。
彼の中では、すでに演目のプログラムが組まれているようだ。
「やっぱり最初は派手なやつだろ!」
左端に置いた花火に手を伸ばす。
誰も制止しないということは、満場一致で賛成のようだ。
「始めるよー!」
「おう」
「うん!」
こうして、ひと足遅い、俺たちだけの花火大会が幕を開けた。
――シュウーッ。
光のフラッシュが辺りを照らす。
「キレイ……」
「……ん? これだけ?」
うっとりしたような佑美の声と同時に出た小泉の言葉。
噴出花火のたったひとつで、男女の価値観のちがいを垣間見た気がする。
男たちは拍子抜けしつつも、ここにいる全員の笑顔が一番輝いていることに俺は気付いていた。
――パンッ!
お次はパラシュート花火。
音がした瞬間、みんな、様々な反応を見せる。
「どこだ!?」
躍起(やっき)になって右往左往する小泉。
「…………」
やはり冷静沈着な川本くん。
「暗くて見えない」
視力の悪い由香里は、夜空に手をかざすだけ。
「あった!!」
沙奈は、燦々と輝く星に目もくれず、舞い降りる落下傘を必死に追っていた。
今にも手が届きそうな、そのとき。
――ドンッ!!