ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】




「キャッ!」」

佑美の体にぶつかって倒れる沙奈。

落下傘ではなく、沙奈の無邪気な姿を目で追っていた俺は、すぐさま彼女に駆け寄った。

「大丈夫か!?」

「う、うん……」

「ほら!」
差しだした手に、砂をはたいてから添えられる細い指。

「ぁ、ありがとう……」

ほんの些細なことにも喜びを感じる、それが片想いの醍醐味。

「ぁ……忘れてた。佑美もほら!」

いつもの笑いを含んだノリで手を差しだす。

しかし、

「フンッ!」

と佑美は自分の力だけで立ちあがる。

……あれ? 怒ってる?

「なんだよ!?」

「……べつに」

これだから、女心はよくわからない。

それからも七色の炎に6人で一喜一憂しながらはしゃいだ。

ラストを飾るのは、言わずと知れた線香花火。

「”せんこう”なのに、やっぱり最後はコレだよな!」

パッとひらめいたボケを言うと、

「……敬太ってオヤジギャグが過ぎるよね。将来が心配だわ!」

と、すっかりいつもの調子に戻った佑美が返す。

「余計なお世話!」

小さなロウソクに身を寄せ、俺たちはしゃがんで円になり、そっと持った線香花火に火をつけた。

――ジリジリジリッ。

力強くも儚い灯火の向こうに、沙奈の横顔があった。

ドクンと鼓動が高鳴る。

淡いオレンジの照明に浮かぶ穏やかな笑みに、愛しさと切なさが込みあげる。

……沙奈にこの気持ちを伝えたい。

唐突にそう思った。


 

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