ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
30分後……。
「これ、えらい興味深いなぁ」
「えぇ……」
「母親は他になにか言うてへんかったか?」
返ってきたノートを俺がつかんでも、なぜか手を離さない今川。
よほど答えを知りたいのか。
「なにかって?」
「なんや、重要なモンを持っとるとか」
「あぁ。持ってはいないですけど、探せとは言われました」
「探せ!?」
ここで手は離れた。
――ボォ―――ンッ。ボォ―――ンッ。ボォ―――ンッ。
大きな古時計が3時を告げる。
……ッ! あと3分。
俺は由香里に視線を向けた。
しかし、
「なにをや!? なにを探せって言うたんや!」
必死な形相で肩を鷲掴みにされ、その威圧感に圧倒される。
「こ、顧客リスト……ですけど?」
その瞬間、彼の眉がピクリと動いた。
「そうか……彼女は持ってないんか、持ってないんやな!?」
「ん゛ん゛ー」
時計の音でか、今川の鬼気迫る声でか、由香里が目を覚ます。
「起きたな。ほら、水だ」
「……あ、ありがとう」
由香里の口はコップに、視線は今川に釘付けだった。
その矛先が時計じゃないことにホッとする。
「ン゛ッ! ……ねえ、その人、誰?」
酔いが醒めたのか、さっきの出来事をまったく覚えていない様子の由香里。
「刑事さんだよ」
沙奈が頭を撫でながら教えた。
「なんで? どうして警察の人がウチにいるの?」
「それは……」
ふたりして口ごもる。
知らないほうがいいことだってあるからだ。
すると、
「キミを逮捕しにきたんやで!」
ニヤッと笑う今川。
少し気まずかった雰囲気を、彼も一緒になって払拭しようとしてくれた。
「そそうだよ! 未成年なのにお酒なんて飲むから」
「えぇえぇえぇ!? 沙奈、これってガチ?」
「うん、ガチ!」
普段遣わない言葉を、場の空気に合わせて発する沙奈。
「やだやだ! ごめんなさい! 許してください!」
「ハハハハッ!」
俺たちに笑い声が戻った。
もう、あの時間まで秒針1周分になっているなんて忘れさせてくれるひととき。
こんなに平和で、しかも刑事までいる。
……今夜こそ、なにも起こらないかもしれない。
おれはそう思った。
「許さへんよー。牢屋に入ってもらわないかんな!」
これ見よがしに拳銃を取りだし、弾の数を確認する今川。
完全な悪ノリだ。
「イヤイヤイ゛ヤ゛!」
「もーう、今川さん! そこらへんにしときましょう、ハハッ」
半泣きで怯える由香里と、笑いながら今川を諭す俺。
「一生出られへんで! ……テンゴクっちゅう牢屋はな!」
――カチャ。
「「えっ!?」」
突如、由香里に向けられた銃口。