ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】


「……な、言うたやろ?」

今川は俺たちにほくそ笑む。

「「浦野さん!」」

「早く銃を捨てるんだ!」

照準を、相棒であるはずの今川から一切外さず、土足のままジリジリと歩み寄る浦野。

「へいへい。そない焦らんでも」

両手をあげ降参を示し、じわりと片方の口角をあげる今川。

――ガタッ。

そして、床に銃を置く。

「こっちに蹴れ!」

「…………」

靴底で拳銃を踏み、後ろに蹴った。

――ザザザッ。

「これでよろしいか?」

今川は不敵な笑みを俺たちに浮かべる。

「頭のうしろに手を組め!」

「はいはい」

「こっちを向け! 妙な動きをするなよ」

「フンッ、教科書どおりやな。ベテランの刑事さんらしい」

「うるさい!!」

……これはいったい……。

目の前の状況を理解できない。

よきパートーナーだったはずのふたりに、なにがあったのか。

そして、今川はなぜ俺たちに銃口を向けたのか。

床に膝をつき、拳銃を回収する浦野。

彼は言う。

「コイツは上層部が仕向けたスパイだ」

「え、っ、スパイ!?」

映画では耳にすることの多いその存在、だが一生のうちに出会うことはないと思っていた。

「あぁ。お前のことを調べたぞ。データベースが改ざんされていたが、お前は昔、あの署にいたな?」

「ピンポーン!」

今川は頭のうしろで手を組みながらも、どこか楽しそうに答える。

「敏也にクスリを横流ししていたのもお前だな?」

「そうや! あの人は高校の先輩でな、人脈も広かったし商売するには打ってつけやった」

少しづつ話が見えてくる。

「それから事件が発覚し、お前は生涯刑務所暮らしを強いられるはずだった。だが、上は条件を提示したんだろ? ”それ”を見つければ無罪放免ってやつか?」

「さすが浦野さん、すべてお見とおしやな~」

「お前が尻尾を出すのをずっと待っていた。まんまと引っかかったな、この警察の恥さらしが!」

「クックックックッ……」

「なにが、おかしい!?」

たしかに、おかしい。

断然に不利な状況にもかかわらず、今川は顔色ひとつ変えない。

それどころか、終始、微笑を浮かべているのだ。

まるで、すべてを予期していたかのように……。

胸騒ぎがした。



 
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