ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



「浦野さん、アンタ撃てるんか?」

「ッ……」

「銃を握ったのさえ久しぶりだ。人を撃つなんてもってのほか、それが正義やと思いこんどる化石のような刑事。そないなアンタに、俺が撃てるか!?」

挑発する今川の、覇気のある語尾に余裕を感じる。

「撃てるさ。お前は”人”じゃない、”クズ”だ!」

さらなる気迫で返す浦野。

瞬時に血走った今川の目を見て、俺の悪い予感は最高潮を迎えた。

「浦……」

――パパァ――ンッ!

2発の銃声。

今川はジャケットの内ポケットに銃を隠し持っていた。無意識に沙奈と由香里に覆いかぶさる。

刹那的な空白のあと、膝をつく男がひとり。

――ドサッ。

彼は、力なく床へと倒れこんだ。

一発は奥の壁に、もう一発は……。

「哀れなおっさんやな!」

浦野の身体を貫いた。

「浦野さーーん!」

彼は息をしているものの、倒れたまま動かない。

「……な、なんで」

俺の思考はすでにオーバーヒート。

他のふたりも、目の前の惨劇に顔を歪める。

「なんでってぇ~お前らは知りすぎたからや。恨むんならな、このおっさんを恨みー」

――パチッ!

今川は薄いゴム製の手袋をはめ、うつぶせになっている浦野の身体をひっくり返す。

そして、銃弾がめりこんだ下腹部に躊躇なく指を突っこむ。

「グゥァ゛アーッ!」

浦野は意識を取り戻す。それほどの激痛だったのだろう。

「動かんといてー。今抜いてやるさかいにー。これからガキを殺してここを燃やすのに、死体から俺の弾が出てきたら、のちのち困るやろ?」

噴き出る血液。

――グチュ、グチッ。

肉をえぐる指。

「「イヤ゛ァ゛ーー!!」」

その音をかき消すふたりの金切り声。

「ガハッ! ヴッ……」

浦野は激痛に耐えながらも一点だけを見つめていた。

その視線の先に……。

……あれは……、浦野さんの拳銃。

今川の背後にあるそれさえあれば、この劣勢を打破できる。

……油断してる隙に……。



 
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