ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
だが……。
「お前も!!」
振り返る今川の、冷酷な目に足が凍りつく。
「く……」
「動かんとき! すぐに始末してやるからな。……ぉ? おぉ! あった!」
高々と掲げられた血まみれの銃弾。
あんなに小さなモノでこんなにも人間を苦しめるのかと、言葉を失う。
「そや! お前らにいいこと教えといたる。すべてはこの浦野が悪いっちゅう理由をな。このお方は、なんと! 伊・達・磨・理・子・のー……」
今川は意味深に語句を切る。
「夫、敏也を、前に捕り逃がしとるんや」
「「え!?」」
俺と沙奈の声が重なる。
なにも事情を知らない由香里は、俺たちの表情を交互に見ていた。
「東京でクスリの密売をしてた頃の敏也は、まだヤクザじゃなかった。だからこそ動きやすかってんけど、そんな敏也に目をつけたのは、当時、暴力団関連の事件を引き受ける部署やったコイツ。裏にデカイ組織が絡んどると踏んでな」
「グフ! ッ゛ア゛……」
今川はタバコを地面ですり潰すように、浦野の下腹部を踏みつける。
「ハッハッハッハ!」
愉しそうに笑いながら。
「グゥァ゛アーッ!」
「う゛、浦野さん……」
浦野の悲痛な呻き声、だが俺にはどうすることもできない。
「しかしまぁ、敏也も俺の指示でうまくやっとった。結果、証拠不十分で起訴にこぎつけず終いや。惜しかったでぇ、たしかに組織は絡んどったからな。絶対に尻尾は出さへんデッカイ組織が!」
身振り手振りを交え、まさにここは今、完全なる今川の独壇場。
2日前、俺はこう思った。
“少しだけ真実へ前進したようにも、はたまた深い沼の中に足を踏み入れたようでもある”と。
不覚にも俺たちは、”警察”という黒く澱んだ底なし沼の中を前進していたのだ。