ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】



……多分彼女は、”まばたき”でも移動するんだ!

しかし、由香里に言葉で伝えることはできない。

俺は、必死に瞬きをした。

体は動かないが、それだけはできる。

「どどうしたらいいの……

ザッ――

キャ!! ……もうイ゛ヤだよ……」

今や、俺の助言が仇となっていた。

由香里はサインを見ようともせず、目の前に迫る恐怖のみと闘っている。

……気付いてくれ! 由香里……。


ズッ――  ザッ―― 


「く、っ……も゛う限界!!」

――ダッダッダッダッ!

とうとう、追いつめられた由香里は駆けだす。

……ダメだ! 彼女に背中を向けるな!

――ダッダッダッダッ!

俺の祈りむなしく、カーテンの向こうに消えた。

ニヤッ。

すると、磨理子は微笑んだ。

“彼女に背中を向ける”、それは絶対にやってはいけないこと。


ズズッ――

       ザザザザザッ――  

    ズズズッ――  

ザザザザザッ――


再び向きを変え、鬼を追う。

「「…………」」

俺と沙奈はただ、そのいびつな前進を見送ることしかできない。

……なんで……どうして……。

こんなときに、涙が止まらない。

なにもできないくやしさもそう、目の前で懸命に這う磨理子の姿を見ていたら、俺は心までも縛られた。

……磨理子さん。お願いします、磨理子さん……もうやめてください。

心の中で、必死に祈る。

ズッ――

      ザザザザザッ――

だが、またも消える背中。

「う゛う゛! ……ハァーッ」

「ッ! ……け、敬太」

磨理子の姿が視界から消えた瞬間、俺たちは自由を取り戻した。

すぐさま由香里のあとを追おうと膝を立てる。

「待って!」



 
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