ダ・ル・マ・さ・ん・が・コ・ロ・シ・タ 【完】
「がんばれ」
「え!?」
俺の感情を見透かしていたのか、横にいた佑美が小さな声で励ます。
「うるせえ」
俺は肩で彼女を押した。
「あっ……」
そのとき、川本くんの火が誰よりも早く落ちる。
「俺のは落ちるな! まだ落ちるなよ……」
小泉の必死に願う様子がおもしろい。
最終的に残ったのは……。
「イヤだー! 敬太に負けたくないぃ」
俺と、
「俺だって沙奈には負けたくないね!」
沙奈。
俺は、なんとなく勝てない気がしていた。
案の定、
「……ぁ、あ~……」
先に火が落ちたのは俺だった。
「やったぁー!」
その瞬間、輪の外側を走り回る沙奈。
俺は彼女のあどけない姿を見て、勝てない予感がした理由がわかる。
だって、ずっと前から、俺は”恋”に落ちていたのだから。
「……終わっちゃったね」
ロウソクの炎さえも消えたとき、沙奈はただでさえ華奢な体をさらに小さく丸めて言った。
彼女の言葉に感化され、それぞれが物思いにふける。
高校最後の夏、俺はなにができただろう。
新たな一歩を踏みだす来年の夏、俺たちは、なにをしているだろう。
未来に対する期待感とともに、胸には不安を抱いていた。
「なんか今日は帰りたくないな……」
そう嘆いた由香里もきっと、将来を不安に思っているにちがいない。
「それなら、ここで語り明かすか?」
……出た!
明日のことすら考えていない、能天気な小泉が本領を発揮。
「明日も学校だぞ!」
しかし、
「「いいねぇ~!」」
「えーーっ!?」
まともなのは俺だけで、みんなは乗り気だ。